「ギャルソン」が「グッチ」「バーバリー」「マルジェラ」など9ブランドとコラボ 川久保玲がデザイン

「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」は、「グッチ(GUCCI)」「バーバリー(BURBERRY)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」、ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)など9つのブランドやデザイナーとコラボしたホリデーコレクションを11月23日に日本で世界先行発売した。海外では12月6日から各地の「コム デ ギャルソン」の店舗およびドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)で発売する。

毎年発売しているホリデーコレクションだが、今年は川久保玲「コム デ ギャルソン」デザイナーが、「グッチ」のアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)、「バーバリー」のリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)、「メゾン マルジェラ」のジョン・ガリアーノ(John Galliano)ら各ブランドのデザイナーにアイコン的なアイテムやデザインを提出するように頼み、それを川久保デザイナーがデザインした9アイテムをそろえる。

その他、今回のホリデーコレクションでコラボしたブランドは「ウォルター ヴァン ベイレンドンク(WALTER VAN BEIRENDONCK)」「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」「クレイグ グリーン(CRAIG GREEN)」「マリーン セル(MARINE SERRE)」「ステューシー(STUSSY)」と、川久保デザイナーの文化的アンテナの高さと広い嗜好が窺えるラインアップとなっている。

ゴルチエとのコラボは、マリンストライプのトップスに赤のポルカドットを加えたもので、「バーバリー」とのコラボは、ブランドのチェックパターンのスカーフに、“My Energy Comes from my Freedom”という「コム デ ギャルソン」のスローガンをプリントした。「メゾン マルジェラ」とは、同ブランドが1993年から毎シーズン販売しているアイコンアイテム、エイズのチャリティーTシャツでコラボした。「メゾン マルジェラ」が同チャリティーTシャツで他ブランドとコラボするのは初めてのことだという。「グッチ」とは、「コム デ ギャルソン」のPVCトートバッグに「グッチ」のストライプを施した。価格帯は250〜500ドル(約2万8000〜5万6000円)だ。

エイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffe)=コム デ ギャルソン インターナショナル(COMME DES GARCONS INTERNATIONAL)最高経営責任者(CEO)兼ドーバー ストリート マーケットCEOは、今年のホリデーコレクションは「単なるコラボではない。どうやって人々と一緒に働くことができるかというインクルーシビリティー(包括性)を表している。コラボパートナーとのブレーンストーミングや単なるやりとりではなく、信頼と尊敬に基づいた『コム デ ギャルソン』スタイルのコラボレーションが生む相乗効果をわれわれはいつも楽しんできた。玲は1つの船に2人の船長がいるのは好きじゃない。だから今回はコラボパートナーに完全に任せるか、彼女に完全に任せるかを選んでもらった。結局、9つのブランド全て彼女に完全に任せることで快諾してもらったよ」と語る。

約20年間毎年発売しているホリデーコレクションのねらいについてジョフィCEOは「人々がセールを待ち望み、贈り物や新しいものが欲しくなるという季節の終わりに店舗に活気を与えるため。こうしたいつもと違う状況で店舗を訪れると、ホリデーコレクション以外のシーズンのものも違って見えるんだ」と言う。

即完売しそうな今回のホリデーコレクションだが、「各店舗がオーダーした分だけ、制限なくできるだけ多く作るようにした。1カ月で売り切るだろうが、意図的に限定品として販売するつもりはない」とジョフィCEOは話す。

「ディオール」メゾンコード研究 創業地の名前を冠した“トロント モンテーニュ”

歴史あるブランドはアイコンと呼ばれるアイテムや意匠を持ち、引き継ぐ者はそれを時代に合わせて再解釈・デザインする。アイコン誕生の背景をひもとけば、才能ある作り手たちの頭の中をのぞき、歴史を知ることができる。この連載では1946年創業の「ディオール(DIOR)」が持つ数々のアイコンを一つずつひもといてゆく。奥が深いファッションの旅へようこそ!

文化はしばしばブランドの世界観と強くつながり、後世のデザイナーたちをインスパイアする。「ディオール」の創業地はパリ8区のモンテーニュ通り30番地である。シャンゼリゼ大通りとセーヌ川をつなぐこのマロニエの並木道は、今でこそ世界屈指の高級ブティック通りとして知られるが、創業者のクリスチャン・ディオール(Christian Dior)がこの地に一目ぼれしたのは戦後間もない1946年のことだ。個人の邸宅であったエレガントな建物を「端正なバランスに従って」改装し、同年12月16日にお披露目。その数週間後にはここで初のファッションショーを開いた。以降、この地からたくさんの物語が生まれている。同じ通りに暮らし、「ディオール」のミューズでもあった女優のマレーネ・ディートリヒ(Marlene Dietrich)も30番地でのショーを何度も訪れている。この話からだけでもムッシュ・ディオールが先見の明で開いたこの場に人々が集まり、流行を生んできたことが目に浮かぶ。「ディオール」の現アーティスティック・ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)は、ムッシュの執務室が残るこの地について「人と場所とのつながりが極めて強力になることがあります。メゾンの歴史発祥の地に足を踏み入れてすぐにそれを感じました」と話している。

そのつながりに着想を得て、マリア・グラツィアが今春スタートしたのが新ライン“トロント モンテーニュ(30 Montaigne、※注 トロントはフランス語で30の意味)”である。「ディオール」を象徴するアイコニックなアイテムを集めた小さなワードローブで、“バー”ジャケットやトレンチコート、プリーツスカートなど流行に左右されることなく愛されるウエアやアクセサリーがそろう。同ラインのコンセプトに合わせたショルダーバッグは最高級のレザーを用い、型紙を使って裁断し一つ一つのピースを組み立てている。縫製からラベルのディテールに至るまで全て職人による手作業だという。「新ラインではメゾンのアイデンティティーを反映するのと同時に、女性がそれぞれのライフスタイルに即した“マイ ディオール”の魅力を持つきっかけを提供したいと考えました」とマリア・グラツィア。スマートフォン用インナーポケットを備え、留め具はワンタッチで開き、ストラップは長さを調整することでクロスボディースタイルも楽しめるなど、細やかな心配りは現代を力強く生きる女性デザイナーならではといえるだろう。

「フェンディ」がバッグ“ピーカブー”10周年で展覧会 森星や安藤桃子が語る家族のきずな

フェンディ(FENDI)」は、ハンドバッグ“ピーカブー”の誕生10周年を記念し、チャリティ企画「ジャパン ピーカブー プロジェクト」を行っている。「世代を超えて受け継がれるアイコン」をテーマに、モデルの森星、映画監督の安藤桃子、シンガーのゆう姫(Young Juvenile Youth)と組んで“ピーカブー”を製作。9月11~24日に、3人がデザインした“ピーカブー”を中心に同プロジェクトを紹介する展覧会を銀座 蔦屋書店内で開催する。10日には、3人が登壇するトークイベントも行った。

「フェンディ」が女系家族に受け継がれているメゾンであることに重ねて、デザイナーやエッセイスト、女優などとして活躍する祖母や母親、姉妹を持つ3人を選出した。展覧会では、3人がデザインした“ピーカブー”を展示。森は黒いクロコダイルレザーに祖母であるデザイナー、森英恵も好んだという花のモチーフをビーズ刺しゅうで載せ、高知を拠点とする安藤は高知のニホンジカの角と浜田和紙を使用、ゆう姫は母と娘をテーマにした自作のイラストを刺しゅうの図柄におこすなど、3人の個性や家族との関係性を思わせるデザインだ。

トークイベントでは、3人が家族とのきずなについて語った。「家族はみな大事だが、中でも若くして来日して、自分を含め5人の子どもを育てた母をリスペクトしている」(森)、「家族とは励まし合って、愛し合って、同時に負けられない存在。年を重ねるごとに関係は深まっている」(ゆう姫)、「普段は忙しさの中で家族との関係がおざなりになっているが、子どもを産んだ時に最初に『お母さんありがとう』と自分自身が感じたことに驚いた」(安藤)。

3人が製作したバッグは、特設サイトで9月11~24日にオークションを行い、収益は3人が賛同する団体にそれぞれ全額寄付する。また、今回のプロジェクトによる収益と同額を、北海道地震の被災者に日本赤十字社を通して寄付する。

展覧会では、これまで英国や中国、日本などで行った同プロジェクトで、アーティストのアデル(Adele)や日本画家の松井冬子らと組んで製作した“ピーカブー”も展示している。親子でミニサイズの“ピーカブー”を折り紙で作ることができるワークショップや、“ピーカブー”のカスタムをウェブ上で体験できるコーナーも設けた。

富裕層や観光客向けへと変化 パリの百貨店・ショップ最新事情

2017年にセレクトショップ「コレット(COLETTE)」が閉店してからというもの、心にぽっかりと穴があいたかのように、パリの街は少々盛り上がりに欠けていた。とがったセレクションで支持される「ザ・ブロークン・アーム(THE BROKEN ARM)」や「コレット」の元従業員がオープンしたショップ「ヌー(NOUS)」などは一部の業界人には人気だが、影響力が大きいとは言い難い。ECの台頭によって実店舗の経営は厳しいのかと思っていたが、昨年末から百貨店やショップに関するニュースが続々と舞い込んできた。その中から、面白いショップやコラボレーションなどを紹介する。

最も大規模で、人の流れを変えると予想されているのは、3月28日にオープンした百貨店ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)が開いたシャンゼリゼ通りの新店だ。百貨店というよりコンセプトストアのようなポジショニングで、多彩な企画を打ち出し、“提案型の実験的店舗”をコンセプトに掲げている。パーソナルスタイリストやテクノロジー、アプリを活用し、ミレニアル世代や新たな顧客層の獲得を目指している。従来の店舗よりも地域の顧客を増やすことを想定しているようだ。しかし、大型店よりも個人店、テクノロジーよりもハンドメード、便利さよりもあえて不便さを選ぶようなフランス人が、大衆的な百貨店に、それもシャンゼリゼ通りに足を運ぶとは思えない。やはり観光客が大半を占めることになるのではないかと予想するが、話題性があるため集客率が高いことは確かだ。

パリの百貨店の中で、地元の顧客が多いのはボン・マルシェ(LE BON MARCHE)百貨店だ。パリ左岸の高級住宅街に建つ品のある館内では、いつ行ってもBCBG(上流階級)と思われる素敵なマダムを見かける。従来の顧客を取り込む保守的な面と、気鋭デザイナーやスタートアップ企業とのコラボレーションなど挑戦的な面の2面性を有する。同百貨店は4月22日まで、米企業のアルマリウム(ARMARIUM)とコラボレーションし、ラグジュアリーブランドの服のレンタルサービスを実施している。アルマリウムは16年にレンタルサービスの事業をスタートさせ、ニューヨークにショールームを構える。18年度の売上高は前年比2倍と好調で、フランスの主要企業とのコラボレーションは今回が初めてだ。オンラインで予約をして百貨店へ行くと、独自開発したAIロボットのアルミボット(ARMIBOT)が作成したルックブックをiPadで閲覧でき、服の詳細を開くと、スタイリストによるスタイリング指南の動画を見ることができる。選択可能なブランドは、「ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)」「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」「ジェイソン ウー(JASON WU)」「シエス マルジャン(SIES MARJAN)」「アーデム(ERDEM)」「アレクサンドル ボーティエ(ALEXANDRE VAUTHIER)」など約50ブランドの19春夏コレクション。アメリカで成長している新事業なだけに、フランスでの今後の広がりが注目される。

ショップ分野においては、今年1月にレピュブリック広場近くにオープンした「ザ・ネクスト・ドア(THE NEXT DOOR)」が好調だ。同店はフランス南東部の地方都市アヴィニョンに2店舗とECサイトを有し、メンズのラグジュアリーブランドとストリートウエアを扱う。セレクトする約70のブランドは「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「ジル・サンダー(JIL SANDER)」「マルニ(MARNI)」のほか、「サカイ(SACAI)」「アンダーカバー(UNDERCOVER)」「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME DES GARCONS JUNYA WATANABE MAN)」「ビズビム(VISVIM)」など日本ブランドの名も並ぶ。「ステューシー(STUSSY)」「ストーンアイランド(STONE ISLAND)」といったカジュアルブランドも多く、Tシャツは40~400ユーロ(約4960~4万9600円)と価格のレンジが広い。4フロア構成となる予定だが、2〜3階はまだ準備中だ。1階は主にウエアが陳列され、地下にはスニーカーが並ぶ。特にスニーカーはレアなラインやコラボレーションモデルもそろえており、マニアからの人気が高いという。

ビンテージ服マニアが熱狂しているのは、昨年11月にパリ16区にオープンした「ル・ヴィフ(LE VIF)」だ。16年にオープンした「ホリデー(HOLIDAY)」の斜め向かいに位置する。ビンテージ服の世界で名の知れたゴーチエ・ボルサレーロ(Gauthier Borsarello)が、友人のアーサー・メングイ(Arthur Menguy)とジェレミー・ル・フェブル(Jeremiah Le Febvre)と共に経営する。ボルサレーロは以前からファッションのプロに向けてビンテージ品のレンタルサービスを行っており、「ホリデー」の地下にはそのショールームを構えていたが、事業拡大と販売を行うために同店を開いた。

5月に予想されているドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)のパリ初出店は、多くの業界人が心待ちにしている。ファッションとは別分野のニュースとしては、4月にマレ地区に、高品質なイタリアの食材を扱う総合フードマーケット「イータリー(EATALY)」が約4000平方メートルの店舗をオープン予定。さらに5月には、パリ中心地に「イケア(IKEA)」もオープンを控えている。「イケア」といえば、中心地からは離れた場所に約2万平方メートルの広大なショールームと売り場を備えているのが通例だったが、パリの店は4分の1の約5000平方メートルの店舗面積となる。スペースを最大限に利用するため、デジタルデバイスでの家具展示を行う予定だ。この都市型「イケア」が成功すれば、今後他都市でも展開されることが期待されている。

パリでは続々と新店がオープンしているが、実際には決して景気が良いとは言えず、長引く黄色いベスト運動の抗議デモが景気減速をますます加速させている。フランスの経済やラグジュアリービジネスに精通するファッション&ラグジュアリービジネス・コンサルタントのアキム・ムステロ(Akim Mousterou)にパリの百貨店・ショップの潮流について聞いた。同氏は「現在のフランスの状況は、下層は苦境から抜け出せず、中間層は税金の負担を強いられ、富裕層だけが優遇される状況でますます格差が広がっている。それに伴って、ビジネスモデルは富裕層に焦点を当てるような流れに変わっている。あとは観光客(特に中国からの)がメインの客層で、主要な百貨店は高度に訓練された販売員と免税手続き処理を重要視する傾向にある。歴史的建築物を変容させ、アートインスタレーションや派手なイベントを行うのは“インスタグラムの罠”にハマっていると言え、本来のフランスらしいテイストとはかけ離れている。パリジャンたちの足はどんどん遠のいている。その分、彼らは保守的で正統派のセレクトショップを支持する傾向にある」と分析する。

2024年のパリ・オリンピックに向けて、街はますます変化を遂げそうだ。特に観光客に対しては、今まで以上に優しい街になるのではないだろうか。しかし在住者としては、まずは一日も早くデモが沈静化することを何よりも願っている。